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Excelで絶対に解けないパスワードのかけ方は存在するのか?暗号化の真実

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「大切な顧客データをExcelに保存しているけど、パスワードをかければ本当に安全なの?」「パスワード解除ツールが数千円で売られているって聞いたけど、それでも大丈夫?」こんな疑問を抱えたことはありませんか?実は多くのビジネスパーソンが、Excelのパスワード保護について誤解を抱いています。

2026年1月現在、Excelには複数のパスワード保護機能が存在しますが、その中には数秒で突破されてしまうものから、量子コンピュータをもってしても2050年まで解読不可能なものまで、セキュリティレベルに大きな差があります。この記事では、Excel専門家の視点から、本当に安全なパスワードのかけ方を徹底解説します。

ここがポイント!

  • Excelには6種類のパスワード保護があり、セキュリティ強度が全く異なる真実
  • AES-256暗号化を正しく使えば、現在の技術では事実上解読不可能である事実
  • 15文字以上のパスワードで量子コンピュータ時代にも備えられる具体的な設定方法
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  1. Excelの6種類のパスワード保護を正しく理解しよう
  2. 唯一の本物のセキュリティはAES-256暗号化である
    1. 正しいパスワード暗号化の設定手順
  3. パスワードの長さと複雑さが運命を分ける
  4. 量子コンピュータ時代にも耐えられるExcelパスワード
  5. パスワード解除ツールの実態を知っておこう
  6. VBAマクロでパスワードを自動入力する際の注意点
  7. 実務で使えるパスワード関連VBAコード集
    1. パスワード付きExcelファイルを開くVBAコード
    2. フォルダ内の複数ファイルに一括でパスワードを設定するVBAコード
    3. 環境変数からパスワードを読み取るVBAコード
    4. 全シートの保護を一括で設定・解除するVBAコード
  8. 現場でよく遭遇するパスワードトラブルと解決法
    1. 前任者がパスワードを設定して退職してしまった問題
    2. 取引先からパスワード付きファイルが送られてきたが開けない問題
    3. 毎日同じパスワードを何度も入力するのが面倒すぎる問題
    4. パスワード付きExcelをSharePointやOneDriveにアップしたら共同編集できなくなった問題
  9. セキュリティと業務効率のバランスを取るための実践的アドバイス
    1. ファイルの重要度に応じた3段階保護戦略
    2. パスワード管理台帳の作り方
  10. 知っておくべきExcelセキュリティの落とし穴
    1. マクロ有効ブック(xlsm)の危険性
    2. パスワード保護しても防げない情報漏洩
    3. クラウドバックアップとの相性問題
  11. パスワード紛失時の最終手段
    1. ヒントから推測する系統的アプローチ
    2. 古いバックアップを探す
    3. データの再作成を検討する
  12. ぶっちゃけこうした方がいい!
  13. よくある質問
    1. 古いExcel形式で保存したファイルのパスワードはどれくらい危険なのか?
    2. シート保護とファイル暗号化を両方かければより安全になるのか?
    3. 15文字以上のパスワードを覚えられる自信がないのだが?
    4. パスワードをメールで送っても大丈夫なのか?
  14. 今すぐパソコンやスマホの悩みを解決したい!どうしたらいい?
  15. まとめ

Excelの6種類のパスワード保護を正しく理解しよう

Excelのイメージ

Excelのイメージ

まず衝撃的な事実をお伝えします。Excelの「シート保護」や「ブック保護」はセキュリティ機能ではありません。これはMicrosoft公式ドキュメントにも明記されている事実です。「ワークシートレベルの保護は、セキュリティ機能として意図されたものではありません。単にワークシート内のロックされたセルをユーザーが変更することを防ぐだけです」と記載されています。

Excelのパスワード保護は大きく分けて6種類存在します。ファイルを開くためのパスワード(読み取りパスワード)は唯一の真のセキュリティ機能であり、AES-256暗号化によってファイル全体のデータをスクランブルします。正しい鍵がなければデータは完全に読み取り不可能となります。

ファイルを編集するためのパスワード(書き込みパスワード)については、実は新しいファイル名で再保存するだけでバイパスできてしまいます。セキュリティ目的としてはほぼ意味がないと言っても過言ではありません。

シート保護パスワードブック構成保護パスワードについては、XMLファイルを直接編集するだけで数秒で解除可能です。これらの保護では元のデータは暗号化されず平文のまま残るため、Googleスプレッドシートにアップロードするだけでも保護が自動的に解除されてしまいます。範囲編集許可パスワードはシート保護が有効な場合のみ機能し、シート保護を解除すれば範囲設定も削除できます。VBAプロジェクトパスワードについても、総当たり攻撃で比較的容易に突破可能であり、外部からのアクセスを完全に防ぐことはできません。

唯一の本物のセキュリティはAES-256暗号化である

ここからが本題です。「パスワードを使用して暗号化」機能だけが、真のセキュリティを提供します。Office 2016以降では、AES-256暗号化アルゴリズムが採用されています。これは米国政府が機密情報の保護に使用するのと同じ暗号化規格であり、現在利用可能な最強の業界標準アルゴリズムです。

AES-256の数学的複雑性は事実上絶対的であり、2026年現在の技術では破ることが不可能とされています。ある専門家の試算によれば、256ビットの鍵で暗号化されたファイルを解読するには、最新のハードウェアを使用しても18年以上かかるとされています。しかもこれは単純なパスワードの場合であり、複雑なパスワードを使用すれば解読時間は天文学的な数字に跳ね上がります。

正しいパスワード暗号化の設定手順

Excelで本当に安全なパスワード保護を設定する方法をご紹介します。まずファイルメニューから情報を選択し、ブックの保護をクリックします。次に「パスワードを使用して暗号化」を選択してください。ここで強力なパスワードを入力し、確認のため同じパスワードを再度入力します。最後にファイルを保存すれば、AES-256暗号化が適用されます。

重要な注意点として、必ずxlsx形式で保存してください。古いxls形式(Excel 97-2003)では、40ビットRC4という非常に脆弱な暗号化しか使用されず、専用ツールで数分以内に解読されてしまいます。2007以降の新しいOpenXML形式(xlsx、xlsm)でのみ、AES-256の恩恵を受けることができます。

パスワードの長さと複雑さが運命を分ける

AES-256暗号化自体は事実上解読不可能ですが、セキュリティの弱点は人間が設定するパスワードにあります。2025年のHive Systemsの調査によれば、12台のRTX 5090 GPUを使用した場合、8文字の数字のみのパスワードは即座に解読され、8文字の英数字混合でも数時間で突破されてしまいます。

米国国立標準技術研究所(NIST)の2024年更新ガイドラインでは、最低15文字以上のパスワードを強く推奨しています。興味深いことに、NISTは従来の「大文字・小文字・数字・記号を必ず含める」というルールを廃止しました。研究の結果、複雑さよりも長さの方がはるかにセキュリティに貢献することが判明したためです。

つまり「P@ssw0rd!」のような短く複雑なパスワードよりも、「今日の夕飯は美味しいカレーライスでした」のような長いパスフレーズの方がはるかに安全ということです。18文字以上で英大文字・小文字・数字・記号を組み合わせたパスワードは、MD5のような弱いハッシュアルゴリズムが使用されていても、解読に438兆年かかると試算されています。

量子コンピュータ時代にも耐えられるExcelパスワード

「量子コンピュータが登場したら、すべての暗号が破られるのでは?」という懸念をお持ちの方も多いでしょう。結論から言えば、AES-256は量子耐性があります。量子コンピュータがAES暗号を攻撃する場合、グローバー量子アルゴリズムにより鍵長が実質的に半分になります。つまりAES-256は量子コンピュータに対して128ビット相当のセキュリティを維持します。これでも依然として解読には膨大な計算が必要です。

2019年のKryptera研究論文によれば、AES-256を有意に破るには6,600個以上の論理量子ビットが必要とされています。IBMの量子コンピュータは2023年時点で1,121量子ビット程度であり、実用的な脅威となるにはまだ何十年もかかるとされています。ETSIの技術レポートでは、AES-256は少なくとも2050年まで量子耐性を維持すると評価されています。

パスワード解除ツールの実態を知っておこう

インターネット上には、数千円から数万円でExcelパスワードを解除するツールやサービスが存在します。「自分でパスワードを忘れた場合の回復ツール」として販売されていますが、実際にはこれらは主にシート保護やブック保護を解除するもの、もしくは弱いパスワードに対する総当たり攻撃を行うものです。

AES-256で暗号化された「読み取りパスワード」については話が全く異なります。強力なパスワードが設定されていれば、これらのツールでも解読は事実上不可能です。あるパスワード回復サービスは「80%のパスワードを回復できる」と主張していますが、これは短いパスワードや辞書攻撃に脆弱なパスワードに限った話です。

注意すべき点として、パスワードを忘れた場合、Microsoftでさえもデータを回復する方法を提供していません。AES-256暗号化ファイルのパスワードを紛失すると、設計上データは永久に完全にアクセス不能になります。これは強力なセキュリティの裏返しでもあります。

VBAマクロでパスワードを自動入力する際の注意点

業務効率化のため、VBAを使ってパスワード付きExcelファイルを自動で開きたいという要望は理解できます。WorkbooksコレクションのOpenメソッドではPasswordパラメータを指定することで、パスワード入力を自動化できます。しかしこの方法には重大なセキュリティリスクが伴います。

VBAコードにパスワードを直接記述すると、そのパスワードはマクロを開ける人なら誰でも見ることができます。VBAプロジェクト自体にパスワードをかけても、前述の通りVBA保護は簡単に突破可能です。さらにVBA実行中は、外部からグローバル変数を読み取ることも技術的に可能なケースがあります。

どうしてもパスワード自動入力が必要な場合は、パスワードを環境変数や別途暗号化されたファイルに保存し、実行時に読み込む方法を検討してください。ただしVBAでセキュリティに関わる処理を実装すること自体が本質的にリスクであり、機密性の高いデータには別のソリューションを検討すべきです。

実務で使えるパスワード関連VBAコード集

Excelのイメージ

Excelのイメージ

ここからは、実際の業務で役立つVBAコードをご紹介します。コピペでそのまま使えるように設計していますが、パスワードをコード内に直接書くことのリスクを十分理解した上でご使用ください。

パスワード付きExcelファイルを開くVBAコード

最も基本的なコードです。指定したパスワードでExcelファイルを開きます。

Sub OpenPasswordProtectedFile()
Dim filePath As String
Dim pw As String

filePath = "C:\Users\YourName\Documents\機密データ.xlsx"
pw = "YourPassword123"

On Error Resume Next
Workbooks.Open Filename:=filePath, Password:=pw

If Err.Number <> 0 Then
MsgBox "ファイルを開けませんでした。パスワードが正しいか確認してください。", vbExclamation
Err.Clear
End If
On Error GoTo 0
End Sub

このコードの問題点は、パスワードが平文でコード内に書かれていることです。後述する「環境変数から読み取る方法」との組み合わせを推奨します。

フォルダ内の複数ファイルに一括でパスワードを設定するVBAコード

大量のExcelファイルにパスワードを設定しなければならない場面は意外と多いものです。以下のコードは、指定フォルダ内のすべてのxlsxファイルに読み取りパスワードを設定します。

Sub SetPasswordToAllFiles()
Dim folderPath As String
Dim fileName As String
Dim wb As Workbook
Dim pw As String
Dim count As Integer

folderPath = "C:\Users\YourName\Documents\保護対象\"
pw = "StrongPassword2026!"
count = 0

Application.ScreenUpdating = False
Application.DisplayAlerts = False

fileName = Dir(folderPath & "*.xlsx")

Do While fileName <> ""
Set wb = Workbooks.Open(folderPath & fileName)
wb.SaveAs Filename:=folderPath & fileName, _
FileFormat:=xlOpenXMLWorkbook, _
Password:=pw
wb.Close SaveChanges:=False
count = count + 1
fileName = Dir()
Loop

Application.ScreenUpdating = True
Application.DisplayAlerts = True

MsgBox count & "個のファイルにパスワードを設定しました。", vbInformation
End Sub

注意点として、元のファイルは上書きされます。実行前に必ずバックアップを取ってください。また、既にパスワードが設定されているファイルがある場合はエラーになるため、事前に確認が必要です。

環境変数からパスワードを読み取るVBAコード

セキュリティを少しでも高めるため、パスワードをコードに直接書かず、Windows環境変数から読み取る方法です。

Sub OpenFileWithEnvPassword()
Dim filePath As String
Dim pw As String

' 環境変数EXCEL_PWからパスワードを取得
pw = Environ("EXCEL_PW")

If pw = "" Then
MsgBox "環境変数EXCEL_PWが設定されていません。", vbExclamation
Exit Sub
End If

filePath = "C:\Users\YourName\Documents\機密データ.xlsx"

On Error Resume Next
Workbooks.Open Filename:=filePath, Password:=pw

If Err.Number <> 0 Then
MsgBox "ファイルを開けませんでした。", vbExclamation
End If
On Error GoTo 0
End Sub

環境変数の設定方法は、コマンドプロンプトで

setx EXCEL_PW "YourPassword"

を実行するか、システムの環境変数設定画面から追加します。これにより、コードを見られてもパスワードは漏洩しません。ただし、同じPCを使う他のユーザーには環境変数が見える可能性があることを忘れないでください。

全シートの保護を一括で設定・解除するVBAコード

複数シートがあるブックで、すべてのシートに同じ保護をかけたい場合に便利です。

Sub ProtectAllSheets()
Dim ws As Worksheet
Dim pw As String

pw = "SheetProtectPW"

For Each ws In ThisWorkbook.Worksheets
ws.Protect Password:=pw, _
DrawingObjects:=True, _
Contents:=True, _
Scenarios:=True, _
AllowFiltering:=True, _
AllowSorting:=True
Next ws

MsgBox "全シートを保護しました。", vbInformation
End Sub

Sub UnprotectAllSheets()
Dim ws As Worksheet
Dim pw As String

pw = "SheetProtectPW"

On Error Resume Next
For Each ws In ThisWorkbook.Worksheets
ws.Unprotect Password:=pw
Next ws
On Error GoTo 0

MsgBox "全シートの保護を解除しました。", vbInformation
End Sub

AllowFilteringとAllowSortingをTrueにすることで、保護状態でもフィルタやソートは使えるようにしています。実務ではこの設定が重宝されることが多いです。

現場でよく遭遇するパスワードトラブルと解決法

ここからは、私自身や周囲のビジネスパーソンが実際に経験した「あるある」トラブルとその解決法をお伝えします。

前任者がパスワードを設定して退職してしまった問題

これは本当によく聞く話です。引き継ぎ資料にパスワードが書いてなかった、そもそも引き継ぎがなかった、などの理由で業務に必要なファイルが開けないという事態が発生します。

解決策は状況によって異なります。まずシート保護やブック保護だけの場合は、前述の通りXML編集やGoogleスプレッドシートへのアップロードで解除可能です。具体的には、xlsxファイルの拡張子をzipに変更し、中のXMLファイルから保護タグを削除します。この方法なら数分で解決できます。

一方、読み取りパスワード(ファイル暗号化)が設定されている場合は非常に厳しい状況です。正直に言えば、強力なパスワードが設定されていれば回復はほぼ不可能です。できることとしては、前任者への連絡を試みる、IT部門に相談する、あるいは有料のパスワード回復サービスを試すくらいです。ただし回復サービスも、弱いパスワードでなければ成功率は低いです。

教訓として、組織では重要ファイルのパスワードを管理者が把握する仕組みを作っておくべきです。パスワードマネージャーの共有機能を使う、暗号化された台帳を別途管理するなど、退職リスクに備えた運用が必要です。

取引先からパスワード付きファイルが送られてきたが開けない問題

「パスワードは別メールでお送りします」と書いてあったのに、そのメールが届かない。あるいはパスワードを入力しても「パスワードが違います」と表示される。こんな経験はありませんか?

まず確認すべきは全角・半角の違いです。特に日本語環境では、数字やアルファベットが全角で入力されていることがあります。パスワードをコピペする際に全角スペースが混入することもあります。メモ帳に一度貼り付けて、文字コードを確認してみてください。

次に大文字・小文字の区別です。Excelのパスワードは大文字小文字を区別します。「Password」と「password」は別物です。送られてきたパスワードをよく確認してください。

それでも開けない場合は、ファイル自体が破損している可能性もあります。メール添付で送られたファイルは、セキュリティソフトによって中身が変更されていることがあります。相手に再送を依頼するか、別の方法(クラウドストレージ経由など)での送付をお願いしてみてください。

毎日同じパスワードを何度も入力するのが面倒すぎる問題

セキュリティのためにパスワードをかけているのに、その入力作業で毎日何分も無駄にしている。本末転倒な気もしますが、現実にはよくある話です。

解決策の一つは、先ほど紹介したVBAコードを使った自動化です。ただしこれにはセキュリティリスクが伴うことは既に説明しました。

より安全な方法としては、パスワードマネージャーの自動入力機能を使うことです。1PasswordやBitwardenなどのツールは、アプリケーションのパスワード入力欄にも自動入力できる機能を持っています。マスターパスワードか生体認証で解除すれば、各ファイルのパスワードを自動入力してくれます。

また、そもそも本当にすべてのファイルにパスワードが必要なのかを見直すことも重要です。社内ネットワーク内でのみ使用するファイル、個人PCでのみ使用するファイルなど、リスク評価をした上で保護レベルを決めるべきです。すべてに最高レベルのセキュリティをかけると、業務効率は著しく低下します。

パスワード付きExcelをSharePointやOneDriveにアップしたら共同編集できなくなった問題

クラウド時代特有の問題です。Microsoft 365では、SharePointやOneDriveにExcelファイルを置いて複数人で同時編集できる「共同編集」機能がありますが、パスワードで保護されたファイルは共同編集ができません

これは仕様上の制限であり、回避方法はありません。セキュリティと利便性のトレードオフです。解決策としては、SharePointのアクセス権限設定やAzure Information Protectionなど、ファイルレベルではなくプラットフォームレベルでのセキュリティを検討することになります。

どうしてもパスワード保護と共同作業を両立したい場合は、作業中はパスワードを外しておき、作業完了後にパスワードを設定してアーカイブするという運用ルールを設けることも一つの方法です。

セキュリティと業務効率のバランスを取るための実践的アドバイス

ここまで読んでいただいた方は、「結局どうすればいいの?」と感じているかもしれません。理想論と現実の間で悩むのは当然のことです。

ファイルの重要度に応じた3段階保護戦略

私が実際に運用している方法をご紹介します。ファイルを3つのカテゴリに分け、それぞれ異なるレベルの保護を適用しています。

レベル1機密性が低いファイルについては、パスワード保護なしか、シート保護のみを設定します。社内の一般的な業務ファイル、誤編集を防ぎたいだけのテンプレートなどがこれに該当します。シート保護はセキュリティ機能ではありませんが、「うっかりミス防止」としては有効です。

レベル2中程度の機密性があるファイルについては、読み取りパスワードを設定しますが、パスワードは8〜12文字程度の覚えやすいものにします。部署内で共有する顧客リスト、社内向けの売上データなどがこれに該当します。パスワードは部署内で共有し、パスワードマネージャーで管理します。

レベル3高い機密性が求められるファイルについては、15文字以上の強力なパスワードで暗号化します。個人情報、財務情報、契約書関連のデータなどが該当します。パスワードは必ずパスワードマネージャーで管理し、アクセス権限も厳格に制限します。

パスワード管理台帳の作り方

組織でパスワード保護ファイルを運用する場合、どのファイルにどのパスワードが設定されているかを管理する仕組みが必要です。Excelで管理台帳を作る場合は、皮肉なことにその台帳自体を最高レベルで保護する必要があります。

台帳に記載すべき項目は、ファイル名、保存場所、パスワードの種類(読み取り・書き込み・シート保護など)、設定日、設定者、そしてパスワードのヒント(パスワードそのものは書かない)です。パスワード本体はパスワードマネージャーに保存し、台帳にはパスワードマネージャー内のエントリ名だけを記載する運用が安全です。

知っておくべきExcelセキュリティの落とし穴

マクロ有効ブック(xlsm)の危険性

VBAマクロを含むxlsmファイルは、それ自体がセキュリティリスクです。悪意のあるマクロは、ファイルを開いただけでPCに被害を与える可能性があります。「マクロを有効にしてください」という表示が出ても、信頼できるソース以外からのファイルでは絶対に有効にしないでください。

前述の「すべてのマクロを有効にする」設定は、どんな状況でも選択してはいけません。出所不明のExcelファイルを開いただけで、ドキュメントフォルダのファイルを暗号化するランサムウェアをVBAで作ることも技術的には可能なのです。

パスワード保護しても防げない情報漏洩

パスワードで保護されたファイルでも、一度開いてしまえばコピー・印刷・スクリーンショットは自由です。悪意のある内部関係者による情報漏洩は、ファイルパスワードでは防げません。

本当に機密性の高い情報を扱う場合は、Microsoft Purview Information ProtectionやAzure Rights Managementなど、エンタープライズレベルのDRM(デジタル著作権管理)ソリューションの導入を検討すべきです。これらは開いた後のコピーや印刷も制限でき、アクセス権を後から取り消すことも可能です。

クラウドバックアップとの相性問題

OneDriveやDropboxの自動同期機能を使っている場合、暗号化されたExcelファイルは差分同期が効かないことがあります。小さな変更でもファイル全体が再アップロードされ、バージョン履歴も正常に機能しないことがあります。これはパスワード暗号化によってファイル内容が完全に変わるためです。大容量ファイルや頻繁に更新するファイルでは、この点を考慮した運用設計が必要です。

パスワード紛失時の最終手段

どうしてもパスワードを思い出せない、回復サービスも使いたくない場合の最終手段をいくつかご紹介します。

ヒントから推測する系統的アプローチ

自分で設定したパスワードなら、設定した時期の自分の習慣を思い出すことが有効です。当時使っていたパスワードのパターン、好きだった言葉、記念日など。紙に書き出して、考えられるパターンをすべてリストアップしてから試すと効率的です。

古いバックアップを探す

パスワードを設定する前のバージョンがどこかに残っていないか確認してください。メールの送信済みフォルダ、古いバックアップドライブ、クラウドストレージのバージョン履歴など、暗号化前のファイルが見つかれば解決です。

データの再作成を検討する

身も蓋もない話ですが、パスワード回復に何日もかけるより、データを作り直した方が早いこともあります。特に回復サービスは高額なことが多く、成功する保証もありません。ファイルの重要度と再作成コストを冷静に比較検討してください。

ぶっちゃけこうした方がいい!

ここまで読んでくださった方に、正直なところをお話しします。

個人的には、Excelのパスワード保護に過度に依存するのはやめた方がいいと思っています。なぜなら、Excelはそもそもセキュリティツールとして設計されていないからです。表計算ソフトにセキュリティの全責任を負わせるのは、包丁に警備員の役割を期待するようなものです。

本当に守りたいデータがあるなら、ファイルレベルではなくシステムレベルでの保護を考えるべきです。具体的には、アクセス権限が適切に設定されたファイルサーバーやSharePoint、監査ログが取れるドキュメント管理システム、エンタープライズレベルの暗号化ソリューションなどです。

それでもExcelパスワードを使うなら、「外部への送信時」と「アーカイブ時」に限定するのが現実的です。日常的にアクセスするファイルにパスワードをかけると、業務効率は確実に落ちます。そして人間は面倒くさいと、結局弱いパスワードを設定したり、パスワードを付箋に書いてモニターに貼ったりするわけです。本末転倒ですよね。

また、パスワードマネージャーは本当に導入した方がいいです。無料のBitwardenでも十分です。「覚えられるパスワード」は「推測されやすいパスワード」とほぼ同義です。人間の記憶力に頼ったセキュリティは、遅かれ早かれ破綻します。

最後に一つ。最強のセキュリティは「そもそも機密データを持たないこと」です。本当に必要なデータだけを保持し、不要になったら確実に削除する。暗号化より前に、データの断捨離を検討してみてください。守るものが少なければ、守る労力も少なくて済みます。

ExcelのAES-256暗号化は確かに強力ですが、それは道具の一つに過ぎません。道具の性能を知った上で、適材適所で使い分ける判断力こそが、本当のセキュリティリテラシーだと私は考えています。

よくある質問

古いExcel形式で保存したファイルのパスワードはどれくらい危険なのか?

Excel 97-2003形式(xls)では、RC4という40ビット暗号化が使用されています。この暗号化は現代の基準では非常に脆弱であり、専用の解読ツールを使えば確実にパスワードを特定できます。つまりxls形式のパスワード保護には実質的なセキュリティがないと考えてください。重要なファイルは必ずxlsx形式に変換し、改めてパスワードを設定してください。

シート保護とファイル暗号化を両方かければより安全になるのか?

セキュリティの観点では、ファイル暗号化(読み取りパスワード)のみが有効です。シート保護はあくまでも「うっかりミスを防ぐ」ための機能であり、悪意のある攻撃者に対しては無力です。両方設定しても害はありませんが、セキュリティが強化されるわけではありません。ファイル暗号化で強力なパスワードを設定することに注力してください。

15文字以上のパスワードを覚えられる自信がないのだが?

パスワードマネージャーの使用を強くお勧めします。NIST 2025ガイドラインでも、パスワードマネージャーの使用が推奨されています。もしパスワードマネージャーを使いたくない場合は、覚えやすいパスフレーズを使用してください。「私の誕生日は3月15日でケーキを食べました」のような日本語の文章でも、ローマ字に変換すれば十分な長さと複雑さを持つパスワードになります。

パスワードをメールで送っても大丈夫なのか?

暗号化されたファイルとパスワードを同じ通信手段で送ることは絶対に避けてください。もしメールが傍受されれば、ファイルとパスワードの両方が攻撃者の手に渡ってしまいます。パスワードは電話、対面、または暗号化されたメッセージアプリなど、別の安全な経路で伝えてください。これは「帯域外通信」と呼ばれるセキュリティのベストプラクティスです。

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まとめ

「Excelで絶対に解けないパスワードのかけ方」は確かに存在します。それは「パスワードを使用して暗号化」機能で、15文字以上の強力なパスワードを設定し、xlsx形式で保存するという方法です。この組み合わせにより、AES-256暗号化の恩恵を受け、現在の技術はもちろん、量子コンピュータ時代が到来しても当面は安全を維持できます。

一方で、シート保護やブック保護だけではセキュリティ効果はほとんどなく、古いxls形式では暗号化自体が脆弱であることを忘れないでください。また、どれだけ強力な暗号化も、弱いパスワードという人的要因によって台無しになり得ます。「password123」では世界最強の暗号化も意味がありません。

今日から実践できることとして、まず既存の重要なExcelファイルがxlsx形式になっているか確認してください。次にファイルメニューから「パスワードを使用して暗号化」を設定し、15文字以上のパスフレーズを使用してください。そしてパスワードマネージャーを導入して、各ファイルに固有の強力なパスワードを管理することを強くお勧めします。これらの対策を講じることで、あなたの大切なデータは本当の意味で守られることになるでしょう。

この記事を書いた人
この記事を書いた人

企業の情報システム部門で10年以上、PC・アカウント・社内ネットワーク・Microsoft 365/Google Workspace運用を担当。年間数百件の問い合わせ対応(PC不調、メール送受信、Excel/Word資料、Teams会議、スマホ連携など)を通じて、初心者がつまずくポイントを「再現→原因切り分け→最短解決」の手順に落とし込んできました

現場や身近で実際に起きたトラブルをベースに、手順だけでなく「なぜそうなるか」「失敗しやすい落とし穴」「安全な設定(セキュリティ)」まで含めて解説します。

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